SPECULA #8
2021, UV硬化インクジェットプリント (StareReap 2.5), ポリ塩化ビニル板 , アルミマウント, 88.8 x 88.8cm
Artwork ©︎ Enrico Isamu Oyama
大山エンリコイサムの作家としての原点は、青年時代に70―80年代のニューヨークのストリートアートから受けた影響にあります。都市の地下鉄や壁にかかれたエアロゾル・ライティング(グラフィティ)の文字を解体し、新しい線を引き直すことで、独自の抽象表現に再構築しました。大山はこの再構築されたモティーフを「クイックターン・ストラクチャー」と名づけ、ときには大きなコンクリートの壁に、ときにはキャンバスや小さな紙にと支持体を自由に変化させ、エアロゾル塗料だけでなく墨やアクリル絵具など多彩なマテリアルで作品を作り上げてきました。このクイックターン・ストラクチャーとStareReapを掛け合わせるべく、今回大山は初めて完全デジタルの制作に着手しています。
SPECULA #8
2021, UV硬化インクジェットプリント (StareReap 2.5), ポリ塩化ビニル板 , アルミマウント, 88.8 x 88.8cm
Artwork ©︎ Enrico Isamu Oyama
大山エンリコイサムの作家としての原点は、青年時代に70―80年代のニューヨークのストリートアートから受けた影響にあります。都市の地下鉄や壁にかかれたエアロゾル・ライティング(グラフィティ)の文字を解体し、新しい線を引き直すことで、独自の抽象表現に再構築しました。大山はこの再構築されたモティーフを「クイックターン・ストラクチャー」と名づけ、ときには大きなコンクリートの壁に、ときにはキャンバスや小さな紙にと支持体を自由に変化させ、エアロゾル塗料だけでなく墨やアクリル絵具など多彩なマテリアルで作品を作り上げてきました。このクイックターン・ストラクチャーとStareReapを掛け合わせるべく、今回大山は初めて完全デジタルの制作に着手しています。
ー大山エンリコイサム
「SPECULA」は新しい作品シリーズで、私にとって初のデジタル作品です。コンピュータでさまざまな「クイックターン・ストラクチャー」の画像を複製、反転、重層、連結することで得られた緻密なヴィジュアルを、リコーの技術「StareReap」で出力し、モノクロームの豊かな質感をもつ18点の平面作品となりました。深層にはQTSの細胞が息づき、全体としては新たな表現になっています。
規則的につらなる線は鑑賞者をさまざまな連想に誘います。壁紙やタイル画、フラクタルやペイズリー模様、アラベスクや曼荼羅、カレイドスコープなどはその一例です。「SPECULUM」はラテン語で「鏡」を意味し、その複数形「SPECULA」は鏡の破片による図像の乱反射を想起させるため、キリスト教とも親和性が高いかもしれない。しかし本シリーズの制作において、私は特定の文化コードを参照してはいません。
そこにあった唯一の原理は、QTSに内在する解体と構成のサイクルです。QTSは、エアロゾル・ライティングの視覚言語にある文字のかたちを解体し、そこに抽出された描線を単位として組み直された抽象的なかたちです。その解体と構成のサイクルはテクノロジーの力でさらに増幅され、QTS自身の輪郭すらも破壊した結果、より微細かつ複雑な線の集積が現れ、フィールドを埋め尽くした。それが「SPECULA」なのです。
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[Artist photo]
Enrico Isamu Oyama in his Brooklyn studio.
Photo ©︎ Collin Hughes
ー大山エンリコイサム
「SPECULA」は新しい作品シリーズで、私にとって初のデジタル作品です。コンピュータでさまざまな「クイックターン・ストラクチャー」の画像を複製、反転、重層、連結することで得られた緻密なヴィジュアルを、リコーの技術「StareReap」で出力し、モノクロームの豊かな質感をもつ18点の平面作品となりました。深層にはQTSの細胞が息づき、全体としては新たな表現になっています。
規則的につらなる線は鑑賞者をさまざまな連想に誘います。壁紙やタイル画、フラクタルやペイズリー模様、アラベスクや曼荼羅、カレイドスコープなどはその一例です。「SPECULUM」はラテン語で「鏡」を意味し、その複数形「SPECULA」は鏡の破片による図像の乱反射を想起させるため、キリスト教とも親和性が高いかもしれない。しかし本シリーズの制作において、私は特定の文化コードを参照してはいません。
そこにあった唯一の原理は、QTSに内在する解体と構成のサイクルです。QTSは、エアロゾル・ライティングの視覚言語にある文字のかたちを解体し、そこに抽出された描線を単位として組み直された抽象的なかたちです。その解体と構成のサイクルはテクノロジーの力でさらに増幅され、QTS自身の輪郭すらも破壊した結果、より微細かつ複雑な線の集積が現れ、フィールドを埋め尽くした。それが「SPECULA」なのです。
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[Artist photo]
Enrico Isamu Oyama in his Brooklyn studio.
Photo ©︎ Collin Hughes
WORKS
ARTIST PROFILE
大山エンリコイサム
おおやま・えんりこいさむ |
Enrico Isamu Oyama
美術家。エアロゾル・ライティングのヴィジュアルを再解釈したモティーフ「クイックターン・ストラクチャー」を起点にメディアを横断する表現を展開し、現代美術の領域で注目される。イタリア人の父と日本人の母のもと、1983年に東京で生まれ、同地に育つ。2007年に慶應義塾大学環境情報学部卒業、2009年に東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了。2011−12年にアジアン・カルチュラル・カウンシルの招聘でニューヨークに滞在以降、ブルックリンにスタジオを構えて制作。2016-20年に大和日英基金(ロンドン)、マリアンナ・キストラー・ビーチ美術館(カンザス)、ポーラ美術館(箱根)、中村キース・ヘリング美術館(山梨)、タワー49ギャラリー(ニューヨーク)、神奈川県民ホールギャラリーなどで個展を開催。2015-20年に『アゲインスト・リテラシー』(LIXIL出版)、『ストリートアートの素顔』(青土社)、『ストリートの美術』(講談社選書メチエ)、『エアロゾルの意味論』(青土社)などの著作を刊行。『美術手帖』2017年6月号ではエアロゾル・ライティングの特集を企画・監修したほか、「コム デ ギャルソン 2012S/S ホワイトドラマ」「シュウ ウエムラ ヴィジョン オブ ビューティー コレクション vol.02 オートストリート」「ジンズ原宿店」などのコミッションワークも手がける。2020年には東京にもスタジオを開設し、二都市で並行して制作を行なっている。
http://www.enricoisamuoyama.net
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[Artist photo]
Enrico Isamu Oyama in his Brooklyn studio.
Photo ©︎ Collin Hughes