CURRENT

Soup Stock Tokyoをはじめ、様々な事業を展開する株式会社スマイルズの遠山正道。美術界では現代アートのコレクターとしても知られており、常々アートとビジネスは切っても切り離せない関係であると語っています。また、2014年からスマイルズは作家としていちはらアートミックスや越後妻有大地の芸術祭、瀬戸内国際芸術祭に参加。デンソーの協力を得て実現した作品や、宿泊可能なアート作品「檸檬ホテル」を提案し、好評を得ました。2018年には、社会実験として遠山正道はPARTYとタッグを組み「The Chain Museum」を立ち上げ、アーティストを支援できるプラットフォーム「Art Sticker」等を展開しています。東京ビエンナーレでは、遠山正道自身にアーティストとしての作品を依頼。2021年6月にアートギャラリーに生まれ変わった銀座四丁目「三愛ドリームセンター」の展望フロアを舞台に、和光時計塔など周囲の景観をとりこむ「時」をテーマにしたインスタレーションとAR作品を発表します。

物品協賛:セイコーホールディングス株式会社
技術協力:sforzando LLC.


LINK:東京ビエンナーレ2020/2021 公式Webサイト






Soup Stock Tokyoをはじめ、様々な事業を展開する株式会社スマイルズの遠山正道。美術界では現代アートのコレクターとしても知られており、常々アートとビジネスは切っても切り離せない関係であると語っています。また、2014年からスマイルズは作家としていちはらアートミックスや越後妻有大地の芸術祭、瀬戸内国際芸術祭に参加。デンソーの協力を得て実現した作品や、宿泊可能なアート作品「檸檬ホテル」を提案し、好評を得ました。2018年には、社会実験として遠山正道はPARTYとタッグを組み「The Chain Museum」を立ち上げ、アーティストを支援できるプラットフォーム「Art Sticker」等を展開しています。東京ビエンナーレでは、遠山正道自身にアーティストとしての作品を依頼。2021年6月にアートギャラリーに生まれ変わった銀座四丁目「三愛ドリームセンター」の展望フロアを舞台に、和光時計塔など周囲の景観をとりこむ「時」をテーマにしたインスタレーションとAR作品を発表します。

物品協賛:セイコーホールディングス株式会社
技術協力:sforzando LLC.


LINK:東京ビエンナーレ2020/2021 公式Webサイト






遠山正道 (アーティスト)
1962年東京生まれ。1996年より内外で複数の個展開催。2000年株式会社スマイルズ設立。 Soup Stock Tokyoなど多数ブランドを展開すると共に、企業であるスマイルズが作家として2015年より越後妻有、瀬戸内などの芸術祭に檸檬ホテルなどの作品を出展。 現在は、街に開放されたミュージアム「The Chain Museum」、アートの新たなるプラットフォーム「Art Sticker」などを展開している。
遠山正道 (アーティスト)
1962年東京生まれ。1996年より内外で複数の個展開催。2000年株式会社スマイルズ設立。 Soup Stock Tokyoなど多数ブランドを展開すると共に、企業であるスマイルズが作家として2015年より越後妻有、瀬戸内などの芸術祭に檸檬ホテルなどの作品を出展。 現在は、街に開放されたミュージアム「The Chain Museum」、アートの新たなるプラットフォーム「Art Sticker」などを展開している。
時の玉座へ − 遠山正道「Spinout Hours」と「OTM」への招待
宮本武典(キュレーター)

この国がカタチを為しはじめたとき、王たちは巨大な墳墓を造り、権勢を風景のなかに表現した。のちに大陸から鋳造技術が伝わると、彼らは銅鐸を打ち鳴らし、列島の民はそれまで耳にしたことがなかった金属音に平伏した。王の威光が人工的な音によって領土にあまねく響くようになると、モニュメントとしての古墳の役割は弱まり、盛土は小さく簡素になっていた。265年続いた太平の江戸では、人々は夜明けから日暮れまでを6等分する鐘の音で寝起きし、懸命に働き、死んでいった。
近代以降、私たちは将軍でも教皇でもなく経済を王とし、地球上の民のほとんどは十二進法で設計された日常を生きている。権力者は広場に時計塔を建てて時を管理し、アメリカ建国の父ベンジャミン・フランクリンは「Time is money」と若者たちを鼓舞した。時計は駅で、職場で、家庭でイコンのように掲げられ、人々これを小型化して手首に巻き、肩身離さず持ち運ぶようになった。

そして2021年の夏。「東京ビエンナーレ2020/2021」で遠山正道が自らの展示会場に選んだのは、銀座四丁目交差点に建つ「三愛ドリームセンター」である。株式会社リコーが所有し、長らく銀座のランドマークとして親しまれる円筒形のビルもまた、高度成長期以降、巨大都市「東京」の絶え間ない膨張を見つめてきた時計的なモニュメントといえる。
このビルが建造された1963年は、太平洋戦争で焦土と化した東京の復興を世界に高らかに宣言した(前の、と書くべきかこの原稿を書いている時点では定かでないが)東京オリンピックの前年で、日本はアメリカに次ぐ経済大国に昇りつめようとしていた。地価は現在も国内でもっとも高額な場所のひとつで、交差点を挟んだ向かいに和光の時計塔、対角には銀座三越、スクランブル交差点には多くの人と車が忙しなく行き交い、まさに日本の「Time is money」を象徴するパースペクティブを構成している。
その名「ドリームセンター」が示す通り、まさに昭和が抱いた夢の中心で屹立する円筒のフロアマップは、そのまま時計の文字盤のように見える。小さなエレベーターに運ばれて最上階にあがると、そこは誰でも立ち入れる展望フロアになっていて、自動扉がひらいた真正面に、明治の世から東京を睥睨してきた和光時計塔の文字盤がまっすぐ視界に飛び込んでくる。

この三愛ドリームセンターの9階に、遠山正道は時計のアート作品「Spinout Hours」を掲げるという。遠山によると、これは未来の時計である。電子決済が普及した世界では、あらゆることが合理化され、簡略化され、それは時間の概念すらも対象となり、10時から12時までの2時間が消されてしまった。この十進法の時計は、2020年6月に横浜の「NEWoman」にも設置されており、遠山が手がけるアート・プラットフォーム「The Chain Museum」を象徴する作品となっている。
公園や駅で使用されるセイコー製アウトドアクロック「SFC-103」の文字盤から「10」「11」「12」を消し去ったレディ・メイド作品だが、今回は和光がセイコーホールディングスグループであることから、特別に同社から「SFC-103」が遠山に無償提供され、さらに、横浜ではクレジットされなかった「SEIKO」の公式ロゴが、そのまま文字盤に残されることになった。アート作品とはいえ、時の番人として「正確さ」を矜恃とするセイコーが、「Spinout Hours」への社名掲出を許可したことは、プロジェクトにとって大きな意味を持つこととなった。

さらに「Spinout Hours」の文字盤には、「SEIKO」のロゴだけでなく、AR技術であるテキストが組み込まれている。
時計の下部に貼り出されるQRコードをスマートフォンで読み取ってかざせば、謎めいた十進法の文字の配列から、失われた2時間をめぐる遠山の呟きが、まさに「弾き出される」ようにこぼれ落ち続けているのが見えるだろう。
さらにフロアの先には、弧を描く展望ガラスのアールに沿って、奇妙な鉄のオブジェが3基、置かれている。「東京ビエンナーレ2020/2021」のための新作で、遠山はこれを「OTM」と呼ぶ。時をめぐるアーティストの空想は、ついには三愛ドリームセンターそのもののタイムマシーン化(On the time machine)に着地する。
人工音声によるアナウンスが聴こえてくる。


OTMに乗ると、行きたい未来に行けます。
OTMには、誰でも、好きな時間だけ乗ることができます。
OTMに乗って、行きたい未来へ、行きなさい。


何者も確かな未来を指し示せない緊急事態宣言下の東京銀座に、時を問い直す時計「Spinout Hours」が掲げられ、鉄腕アトムのような愛らしい空想科学をまとった「OTM」が飛来する。この2つの作品が語りかけてくるストーリーは、実業家としても知られる遠山正道の特異なキャラクター性に依拠している。三愛ドリームセンター建造の1年前、1962年に生まれた遠山自身が、高度経済成長期からバブル崩壊以後の「失われた20年」、そしてコロナ禍の現在まで東京で重ねてきた個人的な体験・記憶が、2つのアート作品を媒介に展望フロア全体に受胎したかのようだ。
「OTM」において、私たちは時の王の支配から逃れ、一人ひとりが無数の時の王になるという、より複雑で混沌とした世界へ突入していく。2つの東京オリンピックの間で醸成された遠山正道の想念と、昭和が描いた夢の中心(三愛ドリームセンター)に乗り込んで、この街のどんな未来が展望できるだろうか?
(東京ビエンナーレプログラムディレクター)
時の玉座へ − 遠山正道「Spinout Hours」と「OTM」への招待
宮本武典(キュレーター)

この国がカタチを為しはじめたとき、王たちは巨大な墳墓を造り、権勢を風景のなかに表現した。のちに大陸から鋳造技術が伝わると、彼らは銅鐸を打ち鳴らし、列島の民はそれまで耳にしたことがなかった金属音に平伏した。王の威光が人工的な音によって領土にあまねく響くようになると、モニュメントとしての古墳の役割は弱まり、盛土は小さく簡素になっていた。265年続いた太平の江戸では、人々は夜明けから日暮れまでを6等分する鐘の音で寝起きし、懸命に働き、死んでいった。
近代以降、私たちは将軍でも教皇でもなく経済を王とし、地球上の民のほとんどは十二進法で設計された日常を生きている。権力者は広場に時計塔を建てて時を管理し、アメリカ建国の父ベンジャミン・フランクリンは「Time is money」と若者たちを鼓舞した。時計は駅で、職場で、家庭でイコンのように掲げられ、人々これを小型化して手首に巻き、肩身離さず持ち運ぶようになった。

そして2021年の夏。「東京ビエンナーレ2020/2021」で遠山正道が自らの展示会場に選んだのは、銀座四丁目交差点に建つ「三愛ドリームセンター」である。株式会社リコーが所有し、長らく銀座のランドマークとして親しまれる円筒形のビルもまた、高度成長期以降、巨大都市「東京」の絶え間ない膨張を見つめてきた時計的なモニュメントといえる。
このビルが建造された1963年は、太平洋戦争で焦土と化した東京の復興を世界に高らかに宣言した(前の、と書くべきかこの原稿を書いている時点では定かでないが)東京オリンピックの前年で、日本はアメリカに次ぐ経済大国に昇りつめようとしていた。地価は現在も国内でもっとも高額な場所のひとつで、交差点を挟んだ向かいに和光の時計塔、対角には銀座三越、スクランブル交差点には多くの人と車が忙しなく行き交い、まさに日本の「Time is money」を象徴するパースペクティブを構成している。
その名「ドリームセンター」が示す通り、まさに昭和が抱いた夢の中心で屹立する円筒のフロアマップは、そのまま時計の文字盤のように見える。小さなエレベーターに運ばれて最上階にあがると、そこは誰でも立ち入れる展望フロアになっていて、自動扉がひらいた真正面に、明治の世から東京を睥睨してきた和光時計塔の文字盤がまっすぐ視界に飛び込んでくる。

この三愛ドリームセンターの9階に、遠山正道は時計のアート作品「Spinout Hours」を掲げるという。遠山によると、これは未来の時計である。電子決済が普及した世界では、あらゆることが合理化され、簡略化され、それは時間の概念すらも対象となり、10時から12時までの2時間が消されてしまった。この十進法の時計は、2020年6月に横浜の「NEWoman」にも設置されており、遠山が手がけるアート・プラットフォーム「The Chain Museum」を象徴する作品となっている。
公園や駅で使用されるセイコー製アウトドアクロック「SFC-103」の文字盤から「10」「11」「12」を消し去ったレディ・メイド作品だが、今回は和光がセイコーホールディングスグループであることから、特別に同社から「SFC-103」が遠山に無償提供され、さらに、横浜ではクレジットされなかった「SEIKO」の公式ロゴが、そのまま文字盤に残されることになった。アート作品とはいえ、時の番人として「正確さ」を矜恃とするセイコーが、「Spinout Hours」への社名掲出を許可したことは、プロジェクトにとって大きな意味を持つこととなった。

さらに「Spinout Hours」の文字盤には、「SEIKO」のロゴだけでなく、AR技術であるテキストが組み込まれている。
時計の下部に貼り出されるQRコードをスマートフォンで読み取ってかざせば、謎めいた十進法の文字の配列から、失われた2時間をめぐる遠山の呟きが、まさに「弾き出される」ようにこぼれ落ち続けているのが見えるだろう。
さらにフロアの先には、弧を描く展望ガラスのアールに沿って、奇妙な鉄のオブジェが3基、置かれている。「東京ビエンナーレ2020/2021」のための新作で、遠山はこれを「OTM」と呼ぶ。時をめぐるアーティストの空想は、ついには三愛ドリームセンターそのもののタイムマシーン化(On the time machine)に着地する。
人工音声によるアナウンスが聴こえてくる。


OTMに乗ると、行きたい未来に行けます。
OTMには、誰でも、好きな時間だけ乗ることができます。
OTMに乗って、行きたい未来へ、行きなさい。


何者も確かな未来を指し示せない緊急事態宣言下の東京銀座に、時を問い直す時計「Spinout Hours」が掲げられ、鉄腕アトムのような愛らしい空想科学をまとった「OTM」が飛来する。この2つの作品が語りかけてくるストーリーは、実業家としても知られる遠山正道の特異なキャラクター性に依拠している。三愛ドリームセンター建造の1年前、1962年に生まれた遠山自身が、高度経済成長期からバブル崩壊以後の「失われた20年」、そしてコロナ禍の現在まで東京で重ねてきた個人的な体験・記憶が、2つのアート作品を媒介に展望フロア全体に受胎したかのようだ。
「OTM」において、私たちは時の王の支配から逃れ、一人ひとりが無数の時の王になるという、より複雑で混沌とした世界へ突入していく。2つの東京オリンピックの間で醸成された遠山正道の想念と、昭和が描いた夢の中心(三愛ドリームセンター)に乗り込んで、この街のどんな未来が展望できるだろうか?
(東京ビエンナーレプログラムディレクター)