REPORT

CHRIS氏の作品の特徴のひとつは、「デコラージュ」という技法にある。キャンバスに新聞や雑誌のページを何層にも貼り付け、その表面を破いたり削ったりすることで、下の層の図柄を表出させ、イメージを作っていく表現方法だ。CHRIS氏の場合は、このデコラージュを基にした絵に、ペインティングやシルクスクリーンを加えたり、あるときは、制作途中で剥いだ紙片を山のように積み上げ、インスタレーション作品として展開してきた。このデコラージュは、現代アート史において様々な作家が実践してきた技法でもあるが、面白いのはCHRIS氏が自然発生的にデコラージュと出会ったことだ。

もともとはファッションブランドのプロデューサーだったCHRIS氏がアーティスト活動を始めたのは2012年のこと。そして2014年、一念発起しカリフォルニアに移住。そこでデコラージュに辿り着く転機を得た。「当初は油絵などを制作していて、サンフランシスコに移った後は、現地のギャラリーに作品を売り込んで回りました。ただ、なかなか受け入れてもらえず、ショックで半年くらい絵が描けない時期が続きました。家にいて周りを見ると何も描いていないキャンバスがいくつも置いてあって、あるときそれに現地のフリーマーケットで見つけたアメコミのページを貼ってみたんです。それをしばらく放置していたら、貼っていた紙がキャンバスからめくれているのを見つけて。ちょうどギャラリーとのやり取りでフラストレーションが溜まっていた頃。そのめくれた部分を思いっきり破いてみたら、そのディテールがかっこよく見えたんです」。曰く、ジーパンなどでいう“ひげ”や“アタリ”など、ファッション的なかっこよさ、“味”に通じるものがあった。そしてこれは作品に使えるのではないかと思い、試行錯誤しながら、自身の表現技法へと昇華させていったのだと言う。

近年、彼がデコラージュを駆使しながら描くのは、野球選手や漫画のキャラクターのようなモチーフだ。小さい時の夢だった野球選手と漫画家。さらに自身のルーツのひとつである90年代風のファッションのムードも取り入れながら、自身の嗜好を形成しているものに改めて向かい合い、作品にしてきた。

今回の個展で見せるStareReap2.5の作品も、野球場を訪れた15人の女性たちがモチーフになっている。過去の作品でも野球のユニフォームを着た女性を描いていたが、本作は私服姿。「僕自身も草野球をしているのですが、実は、制作前に靭帯を切ってしまって。自分自身、野球をプレイする人から、試合を観戦する人になってしまった。その心情からユニフォームを着た人物を描くことに積極的になれなかった部分もあります」と振り返る。しかし怪我も回復し、自力で歩けるようになってくると、気持ちに変化が起こる。本展では、StareReap2.5の作品に加え、オリジナルデザインのトレーディングカードも展示・販売する。そこにあるのは、15人の女性たちがユニフォームを身にまといプロの選手として活躍する姿だ。「15人が野球選手になり、その後、トッププレイヤーに上り詰めたという設定です。その15人の女性の成長物語は、実は自分のリハビリの物語と重なる部分もあり、個人的に感慨深いものもあります」
CHRIS氏の作品の特徴のひとつは、「デコラージュ」という技法にある。キャンバスに新聞や雑誌のページを何層にも貼り付け、その表面を破いたり削ったりすることで、下の層の図柄を表出させ、イメージを作っていく表現方法だ。CHRIS氏の場合は、このデコラージュを基にした絵に、ペインティングやシルクスクリーンを加えたり、あるときは、制作途中で剥いだ紙片を山のように積み上げ、インスタレーション作品として展開してきた。このデコラージュは、現代アート史において様々な作家が実践してきた技法でもあるが、面白いのはCHRIS氏が自然発生的にデコラージュと出会ったことだ。

もともとはファッションブランドのプロデューサーだったCHRIS氏がアーティスト活動を始めたのは2012年のこと。そして2014年、一念発起しカリフォルニアに移住。そこでデコラージュに辿り着く転機を得た。「当初は油絵などを制作していて、サンフランシスコに移った後は、現地のギャラリーに作品を売り込んで回りました。ただ、なかなか受け入れてもらえず、ショックで半年くらい絵が描けない時期が続きました。家にいて周りを見ると何も描いていないキャンバスがいくつも置いてあって、あるときそれに現地のフリーマーケットで見つけたアメコミのページを貼ってみたんです。それをしばらく放置していたら、貼っていた紙がキャンバスからめくれているのを見つけて。ちょうどギャラリーとのやり取りでフラストレーションが溜まっていた頃。そのめくれた部分を思いっきり破いてみたら、そのディテールがかっこよく見えたんです」。曰く、ジーパンなどでいう“ひげ”や“アタリ”など、ファッション的なかっこよさ、“味”に通じるものがあった。そしてこれは作品に使えるのではないかと思い、試行錯誤しながら、自身の表現技法へと昇華させていったのだと言う。

近年、彼がデコラージュを駆使しながら描くのは、野球選手や漫画のキャラクターのようなモチーフだ。小さい時の夢だった野球選手と漫画家。さらに自身のルーツのひとつである90年代風のファッションのムードも取り入れながら、自身の嗜好を形成しているものに改めて向かい合い、作品にしてきた。

今回の個展で見せるStareReap2.5の作品も、野球場を訪れた15人の女性たちがモチーフになっている。過去の作品でも野球のユニフォームを着た女性を描いていたが、本作は私服姿。「僕自身も草野球をしているのですが、実は、制作前に靭帯を切ってしまって。自分自身、野球をプレイする人から、試合を観戦する人になってしまった。その心情からユニフォームを着た人物を描くことに積極的になれなかった部分もあります」と振り返る。しかし怪我も回復し、自力で歩けるようになってくると、気持ちに変化が起こる。本展では、StareReap2.5の作品に加え、オリジナルデザインのトレーディングカードも展示・販売する。そこにあるのは、15人の女性たちがユニフォームを身にまといプロの選手として活躍する姿だ。「15人が野球選手になり、その後、トッププレイヤーに上り詰めたという設定です。その15人の女性の成長物語は、実は自分のリハビリの物語と重なる部分もあり、個人的に感慨深いものもあります」
制作ではStareReap2.5の技術を取り込みながら、ディテールに生かしていった。人物の髪型はパーツごとに段差をつけ、立体感を生んだ。背景の一部にはキャンバスのテクスチャーも見られるが、実はこれも印刷で表現したものだ。

「StareReap2.5は、細かい層を積み上げながら凹凸を作っていく。僕が使うデコラージュの場合は、紙を張り、破ったり削ったりして、層を出していく。表現的な相性も良く、その面白さが作品に表れていると思います。実際にデコラージュで表現したディテールが、StareReap2.5でどのように再現されているのか、その“味”をじっくりと見ていただきたい。」
とCHRIS氏は言う。

「また、StareReap2.5を使った作品は、野球場に来る女性たち。トレーディングカードでは、その後、涙ぐましい努力を重ねてプロになった彼女たちの姿を描いています。鑑賞する方には、その間の物語を想像しながら、楽しんでもらえたら嬉しいですね。」

制作ではStareReap2.5の技術を取り込みながら、ディテールに生かしていった。人物の髪型はパーツごとに段差をつけ、立体感を生んだ。背景の一部にはキャンバスのテクスチャーも見られるが、実はこれも印刷で表現したものだ。

「StareReap2.5は、細かい層を積み上げながら凹凸を作っていく。僕が使うデコラージュの場合は、紙を張り、破ったり削ったりして、層を出していく。表現的な相性も良く、その面白さが作品に表れていると思います。実際にデコラージュで表現したディテールが、StareReap2.5でどのように再現されているのか、その“味”をじっくりと見ていただきたい。」
とCHRIS氏は言う。

「また、StareReap2.5を使った作品は、野球場に来る女性たち。トレーディングカードでは、その後、涙ぐましい努力を重ねてプロになった彼女たちの姿を描いています。鑑賞する方には、その間の物語を想像しながら、楽しんでもらえたら嬉しいですね。」

野球や漫画など、今の自身を形成しているものを作品にしていたCHRIS氏。作品の背景にはそれぞれ異なる、実在の球場が描かれている。
これらは実際に取材しながら描いたという。
野球や漫画など、今の自身を形成しているものを作品にしていたCHRIS氏。作品の背景にはそれぞれ異なる、実在の球場が描かれている。
これらは実際に取材しながら描いたという。
「元素材である新聞の文字や、紙を裂いたりすることで生まれるデコラージュならではの味がStareReap2.5でどう再現されているかも見ていただきたい。」
「元素材である新聞の文字や、紙を裂いたりすることで生まれるデコラージュならではの味がStareReap2.5でどう再現されているかも見ていただきたい。」
作品のモチーフになった女性のファッションやヘアスタイルには90年代のカルチャーが投影されている。当時のストリートスタイルもCHRIS氏の表現のルーツの大きな要素。
作品のモチーフになった女性のファッションやヘアスタイルには90年代のカルチャーが投影されている。当時のストリートスタイルもCHRIS氏の表現のルーツの大きな要素。
CHRIS
1982年、アメリカ・サンフランシスコ生まれ。2012年よりアーティスト活動を開始し、2014年にサンフランシスコに移住。現在は日本を拠点に、国内外で作品を発表している。
近年の展覧会に、「神宮の社芸術祝祭」(明治神宮の社、2020)「ROOKIE」(un petit GARAGE、2021)、アートフェア東京など。
CHRIS
1982年、アメリカ・サンフランシスコ生まれ。2012年よりアーティスト活動を開始し、2014年にサンフランシスコに移住。現在は日本を拠点に、国内外で作品を発表している。
近年の展覧会に、「神宮の社芸術祝祭」(明治神宮の社、2020)「ROOKIE」(un petit GARAGE、2021)、アートフェア東京など。