REPORT

井田幸昌氏は、今、最も注目を集める日本人画家のひとりだ。東京藝術大学在学中から、卓越した画力と色彩感覚に裏打ちされた絵画作品を発表し、高い評価を獲得してきた。今年6月にサザビーズ香港が開催した、歌手でありアートコレクターのジェイ・チョウのコラボレーションオークションでは、井田氏の作品も目玉の一つとして出品され、予札価格を大きく超えて、落札。まだ31歳ながらもすでに世界のアートマーケットは彼に熱い視線を注ぎ、実際、彼の作品を愛するコレクターが世界中にいる。
アートに関心をもったのは、美術家である父の影響だという。いわく、「素行不良になった時期に、何もすることがないならと父に絵を勧められ、そのうち絵の奥深さに惹かれていき、作家になろうと思うようになりました。また父の親友の彫刻家のロバート・シンドルフさんの影響も大きい。僕が作家になろうと決めた時にとても喜んでくださって。すでに亡くなってしまいましたが彼に良い報告することが、ひとつの目標として僕を支えてきた部分もあります」。
代表作品は、身近な人や著名人などをモチーフにした「Portrait」シリーズや、自身の心象風景や無名の人を出会ったその日のうちに描く「End of today」シリーズ。比較的、人物画が多いことを問うと、井田氏は「人への渇望」という言葉を口にした。「幼少期から青年期にかけての体験で、人に対してコンプレックスを持つことが多くありました。僕につらい経験を与えたのは人でしたが、同時に救ってくれたのも人だった。だから心のどこかに、自分自身を認めてあげたい、そして人を愛し、対話をしたいといった渇望が僕の中にあるのだと思います」。
実際に「Portrait」シリーズを描くようになったのは、学生時代のインド旅行がきっかけである。「物乞いの子とか自分と状況の違う人たちの姿をまざまざと見せつけられて。貧しい人がいる一方で富裕層の人もいる。様々な状況が並列されているカオスにショックを受けて、出会った人のことを描いてみようと。そこから家族、ロバート・シンドルフさんなど自分の大事な人を描くようになっていきました。僕は、生と死、人の生きるサイクル、人と出会った時に起こる感情などを含めて、“一期一会“という言葉をテーマにしていますが、人物というモチーフは、そのテーマや自分のコンプレックスとフィットしているのかもしれない。だから、いまだに描き続けているし、きっとこれからも描き続けていくのだろうと思います」
StareReap2.5との共創は、今回が2度目になる。1度目は2020年、自身の作品集『YUKIMASA IDA: Crystallization』を出版した際、「Portrait」シリーズをStareReap2.5でリメイクした。今回の個展では、その新たなバリエーションに加え、StareReap2.5、リトグラフ、シルクスクリーンの3種類のプリント技法を駆使した、合計55作品を見せる。「表現方法によってできることの可能性は変わってきます。例えばStareReap2.5は、マチエール(素材や筆致によって画面に現れる絵肌)まで再現できる。リトグラフは、僕にとって初の試みですが、シミや滲みのような絵画的な表現も可能になる。またシルクスクリーンは平面性高く、発色よく表出できる。その見え方が比較できると面白いかなと思っている」と井田氏。こうした技法を同時に使い分けることで、新たな発見もあったとも話す。「例えば、リトグラフは、レイヤーを重ねてきれいな色層を作る技法ですが、StareReap2.5での制作にも活かせるなと思ったり。全体的に、それぞれの表現の間を行き来しながら、作った作品群とも言えます」
井田幸昌氏は、今、最も注目を集める日本人画家のひとりだ。東京藝術大学在学中から、卓越した画力と色彩感覚に裏打ちされた絵画作品を発表し、高い評価を獲得してきた。今年6月にサザビーズ香港が開催した、歌手でありアートコレクターのジェイ・チョウのコラボレーションオークションでは、井田氏の作品も目玉の一つとして出品され、予札価格を大きく超えて、落札。まだ31歳ながらもすでに世界のアートマーケットは彼に熱い視線を注ぎ、実際、彼の作品を愛するコレクターが世界中にいる。
アートに関心をもったのは、美術家である父の影響だという。いわく、「素行不良になった時期に、何もすることがないならと父に絵を勧められ、そのうち絵の奥深さに惹かれていき、作家になろうと思うようになりました。また父の親友の彫刻家のロバート・シンドルフさんの影響も大きい。僕が作家になろうと決めた時にとても喜んでくださって。すでに亡くなってしまいましたが彼に良い報告することが、ひとつの目標として僕を支えてきた部分もあります」。
代表作品は、身近な人や著名人などをモチーフにした「Portrait」シリーズや、自身の心象風景や無名の人を出会ったその日のうちに描く「End of today」シリーズ。比較的、人物画が多いことを問うと、井田氏は「人への渇望」という言葉を口にした。「幼少期から青年期にかけての体験で、人に対してコンプレックスを持つことが多くありました。僕につらい経験を与えたのは人でしたが、同時に救ってくれたのも人だった。だから心のどこかに、自分自身を認めてあげたい、そして人を愛し、対話をしたいといった渇望が僕の中にあるのだと思います」。
実際に「Portrait」シリーズを描くようになったのは、学生時代のインド旅行がきっかけである。「物乞いの子とか自分と状況の違う人たちの姿をまざまざと見せつけられて。貧しい人がいる一方で富裕層の人もいる。様々な状況が並列されているカオスにショックを受けて、出会った人のことを描いてみようと。そこから家族、ロバート・シンドルフさんなど自分の大事な人を描くようになっていきました。僕は、生と死、人の生きるサイクル、人と出会った時に起こる感情などを含めて、“一期一会“という言葉をテーマにしていますが、人物というモチーフは、そのテーマや自分のコンプレックスとフィットしているのかもしれない。だから、いまだに描き続けているし、きっとこれからも描き続けていくのだろうと思います」
StareReap2.5との共創は、今回が2度目になる。1度目は2020年、自身の作品集『YUKIMASA IDA: Crystallization』を出版した際、「Portrait」シリーズをStareReap2.5でリメイクした。今回の個展では、その新たなバリエーションに加え、StareReap2.5、リトグラフ、シルクスクリーンの3種類のプリント技法を駆使した、合計55作品を見せる。「表現方法によってできることの可能性は変わってきます。例えばStareReap2.5は、マチエール(素材や筆致によって画面に現れる絵肌)まで再現できる。リトグラフは、僕にとって初の試みですが、シミや滲みのような絵画的な表現も可能になる。またシルクスクリーンは平面性高く、発色よく表出できる。その見え方が比較できると面白いかなと思っている」と井田氏。こうした技法を同時に使い分けることで、新たな発見もあったとも話す。「例えば、リトグラフは、レイヤーを重ねてきれいな色層を作る技法ですが、StareReap2.5での制作にも活かせるなと思ったり。全体的に、それぞれの表現の間を行き来しながら、作った作品群とも言えます」
近年、井田氏は、抽象的な風景画やブロンズ像や木彫といった彫刻なども制作する。創作方法の幅の広がりについて問うと、「どうしたら表現者として自分のアウトプットを柔軟にできるようになるだろうかということは考えていますが、広げているという意識はあまりありません。やりたいことをトライしていたらいつの間にか勝手に幅ができていた感じかな」と井田氏。「立体作家になりたかった時期もありますし、以前から版画もやってみたいと思っていました。だた基軸になっているのは、やはり画家である自分。それが絶対的な中心です。それが僕を囲む円の絶対的な中心点です。版画家や彫刻家ではなく、画家だから生まれる発想、表現が必ずある。今回の個展で見せる作品でも同じことが言えると思います」
近年、井田氏は、抽象的な風景画やブロンズ像や木彫といった彫刻なども制作する。創作方法の幅の広がりについて問うと、「どうしたら表現者として自分のアウトプットを柔軟にできるようになるだろうかということは考えていますが、広げているという意識はあまりありません。やりたいことをトライしていたらいつの間にか勝手に幅ができていた感じかな」と井田氏。「立体作家になりたかった時期もありますし、以前から版画もやってみたいと思っていました。だた基軸になっているのは、やはり画家である自分。それが絶対的な中心です。それが僕を囲む円の絶対的な中心点です。版画家や彫刻家ではなく、画家だから生まれる発想、表現が必ずある。今回の個展で見せる作品でも同じことが言えると思います」
井田氏のアトリエにて。工場の跡地をリノベーションしたアトリエには、巨大な絵画や彫刻作品も並ぶ。
井田氏のアトリエにて。工場の跡地をリノベーションしたアトリエには、巨大な絵画や彫刻作品も並ぶ。
アルミ版を支持体にしたStareReap2.5の作品も制作。StareReap2.5ブランドにとっても初の試み。
アルミ版を支持体にしたStareReap2.5の作品も制作。StareReap2.5ブランドにとっても初の試み。
絵については「好きとか嫌いとかいう言葉ではもう表しきれない。つくる事が僕の人生だし、より楽しく豊かな時間を過ごす為に何が必要なのかを考えた時、僕には何かを必死に表現し続けることしかない」と井田氏。
絵については「好きとか嫌いとかいう言葉ではもう表しきれない。つくる事が僕の人生だし、より楽しく豊かな時間を過ごす為に何が必要なのかを考えた時、僕には何かを必死に表現し続けることしかない」と井田氏。
井田幸昌
1990 年鳥取県生まれ。2016 年東京藝術大学美術学部油絵科を卒業。
19 年同大学大学院を修了。16 年に、現代芸術振興財団主催「CAF 賞」で審査員特別賞を受賞。17 年には、世界的な作家とともにレオナルド・ディカプリオファウンデーション主宰のチャリティーオークションへ最年少で参加。また直近ではDiorとのコラボレーションを発表するなど、国際的 に注目を集める。主な個展に『Here and Now』(Mariane Ibrahim Gallery、シカゴ、2020)『King of limbs』(カイカイキギャラリー、東京、2020)、『Rhapsody』(Mayfair Salon、ロンドン、2019)、『Portraits』(銀座 蔦屋書店 GINZAATRIUM、東京、2019)など。作品集に『YUKIMASAIDA: Crystallization』(美術出版社)がある。
https://idastudio.co.jp
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井田幸昌
1990 年鳥取県生まれ。2016 年東京藝術大学美術学部油絵科を卒業。
19 年同大学大学院を修了。16 年に、現代芸術振興財団主催「CAF 賞」で審査員特別賞を受賞。17 年には、世界的な作家とともにレオナルド・ディカプリオファウンデーション主宰のチャリティーオークションへ最年少で参加。また直近ではDiorとのコラボレーションを発表するなど、国際的 に注目を集める。主な個展に『Here and Now』(Mariane Ibrahim Gallery、シカゴ、2020)『King of limbs』(カイカイキギャラリー、東京、2020)、『Rhapsody』(Mayfair Salon、ロンドン、2019)、『Portraits』(銀座 蔦屋書店 GINZAATRIUM、東京、2019)など。作品集に『YUKIMASAIDA: Crystallization』(美術出版社)がある。
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